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和装に似合うバッグの選び方:クラッチから巾着まで【永久保存版】

和装に似合うバッグの選び方:クラッチから巾着まで【永久保存版】

はじめに:着物姿を格上げする「見立て」の美学

着物という日本の伝統衣装は、単なる衣類ではなく、「装い(よそおい)」全体で一つの美意識を表現する芸術です。帯や小物合わせ一つで、着る人のセンスと品格が際立ちます。そして、その「装い」を完成させる上で、バッグの選び方は非常に重要な要素となります。

和装におけるバッグは、単なる実用品ではなく、着物と帯との「調和」と「見立て」を表現するアクセサリーです。洋装では機能性や流行が優先されがちですが、和装では格式、TPO(時・場所・場合)、そして素材感が調和していることが求められます。バッグが一つ浮いているだけで、全体の印象が崩れてしまうからです。

この記事では、着物姿を格上げするために知っておきたいバッグ選びの基本を、格式、種類、そして具体的なシーンに分けて徹底解説します。このガイドを参考に、あなたらしい最高の和装スタイルを完成させましょう。


I. 和装バッグの基本:格式(格)と種類別ガイド

和装のバッグを選ぶ上で最も重要なのは、着ていく着物や帯の「格」と、バッグの「格」を合わせることです。

1. 格式別:バッグの選び方と素材のルール

格式着物の例バッグの格と特徴適した素材・デザイン
【最上格・礼装】留袖、振袖、訪問着金銀の箔、光沢があり、小ぶりで上品なもの。**「格式の高い織り」**が必須。綴れ織り、佐賀錦、エナメル(本革)、ビーズ刺繍。装飾は控えめに品格を重視。金具は金銀。
【準礼装・略礼装】付け下げ、色無地、江戸小紋派手な光沢は避け、落ち着いた布や革製のもの。適度な収納力がある利休バッグが最適。綸子(りんず)やちりめん、上品な織物。金具は銀や真鍮。
【洒落着・カジュアル】小紋、紬、木綿、ウール素材やデザインの自由度が高い。季節感を楽しめるもの。手作り感も歓迎される。巾着、籠バッグ、帆布、シンプルな革製。デニムや麻も可。

📌 重要ポイント: 礼装の場では、たとえ洋装ブランドの高価なバッグであっても、カジュアルな素材(籐、木綿、麻、ナイロン)や大きなロゴが入ったデザインは厳禁です。和装の格式に合う伝統的な織物や上品な光沢を優先しましょう。

2. 代表的な和装バッグの種類と機能性

和装バッグは、その形と機能性によって分類されます。

① 利休バッグ(あおりバッグ)

  • 特徴: 準礼装からカジュアルまで最も汎用性が高く、一つ持っていると重宝します。上部にファスナー付きの本体があり、その両側に「あおりポケット」と呼ばれるオープンポケット(マチ付き)があるのが特徴。
  • 機能: スマホ、長財布、小さな化粧ポーチなど、現代の必需品を無理なく収納できる高い実用性。底がしっかりしており、自立するものが多いのも魅力。
  • TPO: 茶会、観劇、食事会、親戚の集まりなど、幅広いシーンに対応します。

② 巾着・籠巾着

  • 特徴: 浴衣や普段着に最適で、愛らしい印象を与えます。籠と布を組み合わせた「籠巾着」は、特に夏場に涼しげで人気があります。
  • 機能: 財布やスマホなど、必要最低限の荷物が入る小ぶりなものが中心。
  • TPO: 浴衣、木綿や麻の着物、紬などのカジュアルな街歩き。夏祭りに欠かせません。

③ フォーマル手提げ・クラッチバッグ

  • 特徴: 正式な礼装(留袖、振袖)に合わせる最も格の高いバッグです。金具が少なく、織りやエナメルの美しさを際立たせるデザインです。
  • 機能: 非常に小ぶりで、袱紗やハンカチなど最小限の物しか入りません。
  • TPO: 結婚式、入学式、卒業式などの式典。

II. 着物との「調和」の法則:素材・色・柄の選び方

バッグは、着物や帯と喧嘩せず、全体の調和を高める「名脇役」でなくてはなりません。この調和を生み出すのが「素材」と「色・柄」です。

1. 季節感を取り入れる「見立て」の素材選び

バッグの素材感で季節の「涼」や「温」を演出することは、和装の粋な計らいです。

季節適した素材ポイント
春・秋絹、ちりめん、織物(帯地)、本革、合皮汎用性が高い素材。柄は着物や帯のモチーフと合わせると調和する。
竹、籐(ラタン)、麻、山葡萄、レース見た目にも涼しい素材が必須。籠バッグは夏着物の定番。
縮緬(ちりめん)、ベルベット(ビロード)、厚手の織物ぬくもりと重厚感のある素材。冬の小紋やウールの着物に合わせるとお洒落。

📌 籠バッグの注意点: 籠バッグは基本的にカジュアルなアイテムです。準礼装以上の場には持ち込めません。また、竹や籐のささくれが着物の繊細な生地を傷つけないよう、内袋や仕上げをしっかりと確認しましょう。

2. 色合わせの基本テクニック:失敗しない3つの法則

バッグの色を選ぶ際の基本は、**「着物」「帯」「帯揚げ・帯締め」**のいずれかの色と合わせる「三位一体の調和」です。

法則詳細効果
① 同系色でまとめる着物や帯と同じ系統の色(例:薄緑の着物に濃い緑のバッグ)を選ぶ。統一感があり、上品で落ち着いた印象に。初心者にも失敗がない王道。
② 差し色として効かせる帯締めや帯揚げなど、小物の色とバッグの色を揃える(例:小物の赤に合わせてバッグも赤)。アクセントが生まれ、洗練された上級者のお洒落に見える。
③ 万能カラーを選ぶベージュ、グレー、黒、茶などのベーシックカラー。礼装には金銀多くの着物に合わせやすく、コーディネートを考える手間が省ける。

III. TPO別:プロが教える最適なバッグの選択

具体的なシーンにおける最適なバッグ選びをマスターし、自信を持って着物姿を楽しみましょう。

1. 結婚式・披露宴(礼装・最上格)

  • 鉄則: 格を最優先。金銀の光沢がある、小ぶりなフォーマル手提げかクラッチバッグを選びます。織りの格は着物と同格かそれ以上を意識します。
  • NG: 大きさ、籠、木綿、布製の利休バッグ、カジュアルなクラッチ、ブランドロゴが目立つ洋装バッグ。

2. 茶会・式典(準礼装・略礼装)

  • 鉄則: 利休バッグがベスト。控えめな色柄で、派手な金銀の光沢がないものを選びます。
  • 留意点: 茶席ではバッグを自分の足元に置くことが多いため、底がしっかりしていて自立することが非常に重要です。派手な装飾は避け、静謐な雰囲気を乱さないように配慮します。

3. 観劇・食事会(洒落着・略礼装)

  • 鉄則: 自由度が高く、個性が出せるシーンです。着物や帯の柄から一色取ったものや、季節のモチーフを取り入れたバッグ(春は花柄、秋は紅葉柄など)で遊ぶのが粋です。
  • 推奨: 利休バッグ、布製の巾着、上品なカゴバッグ、革製のクラッチバッグ。

4. 普段着・街歩き(カジュアル)

  • 鉄則: 機能性と和の調和を両立させます。籠巾着や大ぶりな巾着は、洋服の時よりも荷物が増えがちなカジュアルシーンで活躍します。
  • 現代的な選択肢: 和柄の帆布トートバッグなど、機能的でありながら和の雰囲気を損なわないアイテムも増えています。ただし、着崩れを防ぐため、リュックやショルダーは避けるのがマナーです。

IV. 和装バッグを長く愛用するためのメンテナンス

お気に入りのバッグを長く美しく保つための簡単なお手入れ法です。

素材お手入れと保管のコツ
織物・ちりめん使用後は乾いた柔らかい布で軽くホコリを払う。湿気を嫌うため、保管時は防湿剤を入れ、不織布の袋に入れる。型崩れを防ぐため、中に薄紙などを詰めておく。
エナメル・合皮柔らかい布で乾拭きする。エナメルは他の素材と密着させると色が移る可能性があるため、保管時は他のものと触れないように注意する。
籠(竹、籐など)使用後、ブラシでホコリを払う。乾燥しすぎると割れる原因になるため、極端な乾燥を避ける。カビ防止のため、湿度の高い場所での保管は避ける。

和装に似合うバッグの選び方まとめ

和装におけるバッグは、単なる荷物入れではありません。それは、あなたが選んだ着物、帯、そしてその日のTPOへの敬意を表現する「語り部」です。

格式、素材、色合わせの基本を押さえつつ、ご自身の個性を反映させた一点を選ぶことで、着物姿はさらに奥深く、魅力的なものになります。

この記事が、あなたの着物ライフをより豊かにするバッグ選びの一助となれば幸いです。

(記事制作者:廣田 )

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