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自宅でできる!着物のお手入れ用品選びと使い方

自宅でできる!着物のお手入れ用品選びと使い方

「着物のお手入れって難しそう…」「毎回クリーニングに出すのは費用がかかる…」そう思っていませんか?

確かに着物はデリケートな衣類ですが、実は自宅でできる日頃のお手入れで、シミや汚れを予防し、美しさを長く保つことができるんです。

適切なお手入れ用品を選び、正しい使い方を知っていれば、高価なクリーニング代を節約できるだけでなく、大切な着物を自分で守る喜びも感じられます。

この記事では、自宅でできる着物のお手入れに役立つ用品の種類と、それぞれの正しい使い方、そして注意点までを徹底解説します。

これさえ読めば、あなたも今日から自宅で着物のお手入れ名人に!


1. なぜ自宅でお手入れが必要なの?

着物を長く美しく保つためには、適切な保管と日頃のお手入れが欠かせません。

  • シミ・汚れの予防と早期対処: 小さな汚れや軽い汗は、時間が経つと落ちにくくなったり、黄ばみの原因になったりします。自宅で早めに対処することで、深刻なシミになるのを防げます。
  • カビ・虫食いの予防: 湿気や汚れは、カビや虫食いの原因になります。着用後の適切な手入れは、これらのダメージから着物を守ります。
  • 風合いを保つ: 適切な手入れは、着物の素材の風合いや光沢を保ち、着心地の良さにもつながります。
  • 経済的負担の軽減: 全てを専門のクリーニング店に依頼すると費用がかさみますが、自宅でできることを増やすことで、経済的な負担を減らせます。

ただし、自宅でのお手入れには限界があり、全てのシミや汚れに対応できるわけではありません。

大切なのは、自分でできることと、専門家にお願いすべきことを見極めることです。


2. 着物お手入れの基本:揃えておきたい必須アイテム

まずは、自宅で着物をお手入れするために最低限揃えておきたい基本アイテムをご紹介します。

2.1. 着物ハンガー(衣紋掛け・えもんかけ)

  • 役割: 着物を広げて干すための専用ハンガーです。袖がしわにならないよう、肩から袖口までをきちんと広げて干せるように作られています。通気性を確保し、湿気を飛ばすために必須です。
  • 選び方:
    • 幅広タイプ: 着物の肩から袖までをしっかり支えられる、肩幅が広いものを選びましょう。
    • 伸縮性: 長さが調節できる伸縮タイプだと、様々なサイズの着物に対応できます。
    • 素材: プラスチック製が一般的で、軽量で扱いやすいです。
  • 使い方: 着用後の着物を広げ、肩山が崩れないようにかけます。風通しの良い日陰で、数時間から半日程度干しましょう。直射日光は色褪せの原因になるので避けてください。

2.2. 着物ブラシ(和装ブラシ)

  • 役割: 着物の表面についたホコリやチリ、軽い汚れを優しく払い落とすためのブラシです。
  • 選び方:
    • 毛の素材: 馬毛や豚毛などの天然素材で、柔らかく毛足の長いものが着物を傷つけずにおすすめです。静電気が起きにくいものを選びましょう。
    • 形状: 持ちやすく、広範囲をブラッシングできるものが便利です。
  • 使い方: 着物ハンガーにかけた状態で、毛並みに沿って上から下へ、優しくブラッシングします。強くこすったり、逆毛にブラッシングしたりすると、生地を傷める原因になるので注意しましょう。特に襟元や袖口、裾など、汚れやすい場所は念入りに。

2.3. たとう紙(文庫紙・ぶんこし)

  • 役割: 着物を保管する際に、湿気やホコリ、日光から守るための和紙製の包み紙です。通気性に優れ、調湿効果もあります。
  • 選び方:
    • 素材: 通気性の良い和紙製を選びましょう。防カビ剤が練り込まれているタイプもあります。
    • サイズ: 着物を広げて平らにしまえる十分な大きさがあるものを選びます。
  • 使い方: 着物を丁寧にたたみ、たとう紙に包んで保管します。定期的にたとう紙を交換することで、湿気によるカビや黄ばみを防げます。

2.4. 防虫剤・乾燥剤

  • 役割: 着物の大敵である虫食いやカビから守るためのものです。
  • 選び方:
    • 防虫剤: 化学繊維の防虫剤と、天然素材(樟脳、白檀など)の防虫剤があります。複数の種類の防虫剤を併用すると、化学反応を起こしてシミになることがあるので、必ず1種類のみを使用しましょう。着物に直接触れないように、専用のケースに入れるか、たとう紙の外側や引き出しの隅に置きます。
    • 乾燥剤(除湿剤): シリカゲルなどの乾燥剤は、湿気から着物を守るのに役立ちます。防虫剤と同様に、着物に直接触れないように配置しましょう。
  • 使い方: 箪笥や衣装ケースに入れる着物の量に応じて、適切な量を配置します。効果が切れる前に定期的に交換しましょう。

3. シミ・汚れへの初期対応アイテム

食べこぼしや泥ハネなど、不意についてしまったシミや汚れへの初期対応に役立つアイテムです。

3.1. 綺麗な白い布(綿または絹)

  • 役割: シミや汚れを拭き取る際に、着物に色移りしないよう、白い清潔な布を使います。
  • 選び方: 吸水性の良い綿の布や、着物と同じ絹の布が適しています。ティッシュペーパーは繊維が残る場合があるので避けた方が良いでしょう。
  • 使い方: シミが付いた直後に、この布でそっと叩き拭きします。こすると汚れが広がるので、決してこすらないように注意してください。

3.2. ベンジン(揮発性シミ抜き剤)

  • 役割: 油性のシミ(ファンデーション、口紅、食用油など)の初期対応に用います。
  • 選び方: 着物用や衣類用のシミ抜きベンジンを選びましょう。ホームセンターやドラッグストアで購入できます。
  • 使い方:
    1. 必ず目立たない場所(着物の裾の裏側など)で色落ちや生地への影響がないか試します。
    2. 下に乾いた白い布を敷き、その上にシミのある部分を置きます。
    3. 別の白い布にベンジンを少量含ませ、シミの外側から内側に向かって、トントンと軽く叩くようにして汚れを浮かせます。シミを広げないように、円を描くように叩くのがコツです。
    4. ベンジンが乾いたら、よく乾燥させます。
  • 注意点: ベンジンは揮発性が高く、換気を十分に行い、火気厳禁です。色柄物や繊細な生地(金銀糸の織り込まれた部分など)への使用は特に注意が必要です。水性のシミ(飲み物、泥など)には効果がありません。

3.3. 中性洗剤(おしゃれ着用洗剤)

  • 役割: ごく軽い水性のシミや、木綿・麻・ポリエステルなどの洗える着物を自宅で洗濯する際に使います。
  • 選び方: 「おしゃれ着用」や「ドライマーク対応」の中性洗剤を選びましょう。蛍光増白剤や漂白剤が入っていないものを選んでください。
  • 使い方(水性シミへの初期対応):
    1. これも必ず目立たない場所で試してから。
    2. 中性洗剤を薄めた液を白い布に少量含ませ、シミの外側から内側へ、トントンと軽く叩くようにして汚れを吸い取ります。
    3. 水で濡らして固く絞った別の白い布で、洗剤成分を叩き取るように拭き取ります。
    4. よく乾燥させます。
  • 注意点: 絹の着物には基本的に使わないでください。水に濡れるとシミになったり、縮んだり、風合いが変わったりする可能性があります。あくまで「洗える着物」の洗濯や、ごく軽い水性シミの初期対応に限定しましょう。

4. 着物の正しい保管に必要なアイテム

着物の美しさを保つには、適切な環境での保管が非常に重要です。

4.1. 桐箪笥または着物用収納ケース

  • 役割: 着物の保管に最適なのは、やはり桐箪笥です。桐は調湿性や防虫効果に優れており、大切な着物を湿気や虫から守ります。
  • 選び方:
    • 桐箪笥: 予算に余裕があれば、着物専用の桐箪笥がベストです。
    • 着物用収納ケース: 桐箪笥が難しい場合は、防湿・防虫加工が施されたプラスチック製の着物用収納ケースや、不織布製の通気性の良いケースを選びましょう。密閉性が高いものは湿気がこもりやすいので注意が必要です。
  • 使い方: たたんだ着物をたとう紙に包んで収納します。ぎゅうぎゅうに詰め込まず、ゆとりを持って収納することで、着物の型崩れや湿気だまりを防ぎます。

4.2. 和紙(薄葉紙)

  • 役割: 着物をたたむ際に、色移りや摩擦を防ぐために間に挟む薄い紙です。
  • 選び方: 無酸性で着物専用の和紙を選びましょう。
  • 使い方: 着物をたたむ際に、袖の内側や、胴裏と表地の間に挟むことで、折りジワの軽減や生地同士の擦れを防ぎます。

5. 自宅でお手入れする際の注意点とNG行為

いくら自宅でお手入れできると言っても、着物は洋服とは異なります。いくつか守るべき注意点があります。

5.1. 素材と洗濯表示を必ず確認する

  • 絹: ほとんどの場合、自宅での水洗いはできません。汗抜きや軽い汚れならベンジンで対処できますが、基本的には専門店に任せましょう。
  • 木綿・麻・ポリエステル: 洗濯表示を確認すれば、自宅での水洗いが可能なものも多いです。ただし、色落ちや縮みの可能性があるので、必ず単独で洗いましょう。
  • 部分使い: 金銀糸や刺繍、箔などが使われている部分は特にデリケートです。ベンジンや水で傷める可能性があるので、自己判断での処理は避けてください。

5.2. 「こする」「叩きすぎる」はNG

シミや汚れを落とそうと、ゴシゴシこするのは絶対にやめましょう。繊維が傷つき、白化したり、汚れがさらに奥に入り込んだり、広範囲に広がったりする原因になります。優しく「叩き出す」ように処理するのが基本です。

5.3. 直射日光での乾燥は避ける

着物を干す際は、必ず風通しの良い「陰干し」にしてください。直射日光は、着物の色褪せや生地の劣化を早める原因になります。

5.4. 乾燥機は絶対に使用しない

乾燥機は、着物を大きく縮ませたり、型崩れさせたりする原因になります。自然乾燥が基本です。

5.5. 状態がひどい場合は迷わずプロに相談

自分で対処しきれない大きなシミ、広範囲の汚れ、カビ、虫食いの穴など、深刻なダメージの場合は、無理せず着物専門のクリーニング店や悉皆屋(しっかいや)に相談しましょう。自己流で悪化させてしまうよりも、プロに任せる方が結果的に費用も安く済むことがあります。


6. 着物のお手入れ用品選びと使い方まとめ

着物は、手入れが大変というイメージがあるかもしれませんが、日頃から適切なケアをすることで、その美しさを長く保つことができます。着物ハンガーで湿気を飛ばし、ブラシでホコリを払い、たとう紙に包んで適切に保管する。これだけでも、着物の寿命はぐんと延びます。

また、不意のシミには、ベンジンや中性洗剤での初期対応を試すことも可能です。ただし、必ず目立たない場所で試すこと、そして「無理はしない」ことが鉄則です。

自宅での正しいお手入れ方法を身につけることで、着物に対するハードルが下がり、もっと気軽に、もっと頻繁に着物を楽しむことができるようになるはずです。大切な着物と共に、豊かな着物ライフを送りましょう!

(記事制作者:廣田 )

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