
着物をより美しく見せる所作:手元・足元・視線のポイント
着物姿がどれだけ美しく整っていても、動き方や立ち居振る舞いが不自然だと魅力が半減してしまいます。
逆に言えば、正しい所作を意識するだけで、着物の美しさは格段に引き立つのです。
本記事では、着物を着たときに特に大切にしたい 手元・足元・視線 の3つに分けて、今日から実践できる具体的なコツをご紹介します。
成人式、結婚式、観劇やお出かけなど、さまざまなシーンで役立つ内容です。ぜひ参考にしてみてください。
1|着物姿は「所作」で決まる

着物は洋服と違い、着崩れを防ぐ・帯をちら見せしないなど、守るべき動きのルールが存在します。また、布の重なりや直線的なシルエットを美しく見せるためには、コンパクトで無駄のない動きが基本です。
特に周囲の目に入りやすい
- 手元(手の動き・指先)
- 足元(歩き方・立ち方)
- 視線(顔の向き・表情)
は、美しさが露わになるポイント。その3つを意識するだけで、所作は一気にレベルアップします。
2|手元を美しく見せるコツ

手の動きは最も視線が集まりやすい部分です。丁寧に、滑らかに、女性らしく見せるためのポイントを解説します。
●基本は「指先をそろえる」
開きすぎた指先はガサツな印象になりがち。
ポイントは、
- 指を軽く揃える
- 力を入れずに丸みを持たせる
- 手首から先の動きをしなやかに
まるで水をすくうようなイメージで。
●バッグや荷物は体の前か右側に
手提げバッグは前に持つと帯の横幅を邪魔せず、姿勢も美しく見えます。
ショルダーバッグの場合は右側へ持つと帯に当たりません。
●歩くときの手の揺れは最小に
振りすぎると洋服の歩き方になり、野暮ったい印象に。
袖の重みを支えるため、
- 肘を軽く曲げて固定
- 手は体の近くに
これだけで上品な見た目になります。
●座るとき・物を取るときは袖口に注意
袖が床やテーブルにつくと不格好になったり汚れの原因にも。
対策は「袖を軽く押さえる」。
特に小紋や訪問着では必須の所作です。
3|足元の美しい見せ方

着物の動き方で最も難しい部分が歩き方。足運びがそのまま品格につながります。
●歩幅は小さく、内股に
着物姿では直線的で控えめな歩きが基本。
- 歩幅は自分の靴サイズより少し狭く
- つま先は少し内側へ向ける
これだけで着物の裾が乱れず、中央のラインが美しく見えます。
●膝を開かない
椅子に座るときは、
- 背筋を伸ばす
- 両膝をつける
- 脚は真っ直ぐ揃える
柔らかな上品さが出ます。
●階段はゆっくりと、片手で裾を押さえる
和装で階段は裾が開きやすい難関ポイント。
帯に当たらないよう、手は前で裾を軽く押さえながら小さく上がります。
●振り返るときは上半身ごと
洋服のように腰から捻ると裾が広がり着崩れの原因に。
体全体を使って向きを変えると、優雅な印象に。
4|視線の使い方は「余裕」を演出する

視線は着物姿の雰囲気を決定づけます。
●少しあごを引く
美しい首のラインが出ると同時に、帯位置も高く見え、全体がシャープに。
写真撮影時も効果的です。
●目線は水平より少し下に
キリッとしすぎず柔らかい印象を与えます。
下を向きすぎると猫背に見えるので、あくまで「少しだけ」。
●笑顔は口角を上げて柔らかく
大きく笑いすぎると着物姿とバランスが悪くなることも。
自然な微笑みが◎。
●人と話す時は姿勢を保ちつつ視線で心を向ける
- 相手に敬意を示す角度
- 首を大きく傾けすぎない
この意識だけで品格が高まります。
5|立ち方・座り方の基本所作

着物美を引き立てる土台として、姿勢も欠かせません。
●立ち姿
- 背筋をスッと伸ばす
- 下腹部に軽く力を入れる
- 重心はやや前に
帯位置が高く見え、後ろ姿も粋になります。
●座り姿
- 帯を潰さないよう浅く座る
- 膝はつけて脚を揃える
- 手は太ももの上で揃える
立ち上がりは前に傾いてから、ゆっくりと。
6|よくあるNG例と解決策
| NG動作 | 印象 | 改善ポイント |
| 大股で歩く | 裾が広がり乱雑に | 歩幅を小さく、腕は体の近く |
| 背中を丸めてスマホ | 帯が崩れる、だらしない | なるべく顔の高さで持つ |
| 指を開きすぎる | 手が大きく見える | 指先を揃えて力を抜く |
| 階段で袖放置 | 袖汚れ・はだける | 袖と裾を軽く押さえる |
7|シーン別に意識したい所作
●お辞儀
腰を曲げずに上半身から。手は体の前で揃え、深呼吸するように丁寧に。
●写真撮影
- つま先を少し内側へ
- 手は体の前で自然に
- 帯の中心が正面に来ているか確認
少し体を斜めにすると着物の柄が綺麗に映えます。
8|自宅でできる所作トレーニング
- 歩き方の練習(廊下でつま先を内向きに)
- 袖を押さえての立ち座り反復
- 鏡の前で指先と視線チェック
- 座布団を使っての正座→立ち姿勢
たった5分でも続ければ、動きが見違えます。
9|着物美は「内面」も映し出す
着物の所作は、心のあり方を表現する手段でもあります。
丁寧さ、静けさ、相手を思いやる気持ち…
そのすべてが動きに表れ、着物そのものが持つ歴史や文化を映し出します。
ゆったりと呼吸し、心にも余裕を持つ。
それが最高に美しい着物姿へと繋がります。
◆着物をより美しく見せる所作まとめ
| 美しさのポイント | コツ |
| 手元 | 指先を揃え、袖口に気を配る |
| 足元 | 小股で歩き、膝を揃える |
| 視線 | あごを引き、目線は少し下に |
たったこれだけでも印象が大きく変わります。
着物は「所作」という言葉のない会話を引き出してくれる服
ぜひ、手元・足元・視線に意識を向けてみてください。
きっと周囲の視線を惹きつける、凛として美しい着物姿になるはずです。
(記事制作者:廣田 )
